その全貌が明らかになった坂本龍一8年ぶりのオリジナルアルバム『async』。
みなさんはどのようにお聴きになりましたか?

ここではワタリウム美術館で開催中の『Ryuichi Sakamoto | async』展に来場された方々がアルバムについての思いを綴った「解読」と坂本龍一本人の言葉を残していく「返信」を更新していきます。

また、引き続き『async』発売前に公開していました 坂本龍一の足跡を辿る「予習」、多くの皆さんとニューアルバムを予測した「予想」もお楽しみください。

予習 『Sweet Revenge』(1994年作品)と『Smoochy』(1995年作品)

 『Sweet Revenge』は1994年に発表されたソロ・アルバム。80年代末から90年代初頭の期間の海外メジャー、ヴァージン・レコードとの契約を終え、新たに日本国内ではフォーライフ・レコードと「gut」レーベルを設立(この時期海外ではエレクトラ・レコーズやSony Classicsなどと契約)しての作品発表となった。 
 当時、坂本龍一はそれまでのヴァージンとの契約をふり返り、ただメジャーで海外リリースをしても、各国の事情や受け入れられ方を考えずに出すのでは意味がないということを語った。
ヴァージンでのアルバム『Beauty』や『Heartbeat』は日本と海外では収録曲や曲順がそれぞれ異なり、そのことによってアルバムのイメージや統一感がやや混乱することにもなっていた。
そこで、この『Sweet Revenge』と続く『Smoochy』は、日本国内ではフォー・ライフから、日本ならではの内容で日本版をリリースし、海外ではエレクトラやミランなどが海外版として、坂本龍一自身がちゃんと監修した海外向けの内容(といっても、日本版と大きく異なるものではない。いくつかのヴォーカル曲が英語ヴォーカルに差し替えられたりといった具合)で地域を分けつつ、クオリティをコントロールした形でアルバムを発表することになった。
 『Sweet Revenge』『Smoochy』のどちらとも、坂本龍一のメロディー・メイカーとしての才が存分に発揮された、坂本史上でもっともポップなアルバムとなった。それは海外版でも変わっていない。
 今回の『async』もまた、日本ではcommmons、海外ではミランからの発売という形になる。発表された曲目を見る限りでは日本版と海外版の差異はなさそうだが、果たして?

(執筆:吉村栄一)