その全貌が明らかになった坂本龍一8年ぶりのオリジナルアルバム『async』。
みなさんはどのようにお聴きになりましたか?

ここではワタリウム美術館で開催中の『Ryuichi Sakamoto | async』展に来場された方々がアルバムについての思いを綴った「解読」と坂本龍一本人の言葉を残していく「返信」を更新していきます。

また、引き続き『async』発売前に公開していました 坂本龍一の足跡を辿る「予習」、多くの皆さんとニューアルバムを予測した「予想」もお楽しみください。

予習 『CASA』(2001年作品)

 『CASA』は坂本龍一とジャケス・モレレンバウム、パウラ・モレレンバウムによるユニット“MORELENBAUM2/SAKAMOTO”のアルバム。全曲が坂本龍一の敬愛するブラジルの作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンの作品をカヴァーしたもので、録音はリオ・デ・ジャネイロのジョビンの家(愛用のピアノを演奏!)やゆかりのスタジオ。共演のモレレンバウム夫妻もジョビンと縁の深いミュージシャンだ。
 坂本龍一は、ここでは全曲をジョビン作品のカヴァーし演奏することで、ジョビンの音楽の美しさの秘密をあらためて学習したのだろう。
 『LIVE IN TOKYO 2001』『A DAY in new york』、さらに派生作品である坂本龍一ソロ名義の『IN THE LOBBY AT G.E.H. IN LONDON』というすばらしい3枚のライヴ・アルバムを残したワールド・ツアーを経て、ジョビン作品の美しさの断片は、以降の坂本龍一のオリジナル作品にもところどころ顔を出している。
きっと最新作『async』のどこかにも、その美しい種から生まれた芽が顔をのぞかしているにちがいない。
 くしくも、『async』の世界発売直後となる本年5月、ブラジル・サン・パウロでひさしぶりとなる“MORELENBAUM2/SAKAMOTO”の3人によるコンサートが行われることも発表されている。
これは偶然の一致か、それとも?

(執筆:吉村栄一)